【Misoca×弥生社長 対談】グループ化のこれまで、これから
Misocaが弥生のグループ会社へ——。この協業がこの先どんな世界を生み出していくのか。2016年2月のグループ化からのこれまでを振り返るとともに、将来的なコネクトEDI構想について両社社長が話をしました。
この協業が両者を面白い方向に持っていけると思っています
——2014年9月から一部のサービス連携が開始。16年2月にはMisocaが弥生の傘下となり正式な協業がスタートしています。お二人が初めて対面されたときの印象は?
弥生・岡本浩一郎社長(以下、岡本) 初めてお会いしたのは2014年の夏ごろでしたかね。真摯にものづくりに取り組んでいて、すごく真面目な方だと思いました。それは今も変わらず感じていますね。
Misoca・豊吉隆一郎社長(以下、豊吉) 私のほうはMisocaのサービスをやっていくなかで常に弥生のことは意識していましたから、その代表とお会いすると決まったときから緊張していました(笑)。ただ実際にお会いしてみると、とてもきさくな方で話しやすかった。一方で論理的かつ合理的にものごとを考える方で、話していくうちに、協業していく流れも、自然に生まれていきました。
——協業から1年半。豊吉社長はどんなメリットを感じていますか?
豊吉 いちばん大きいのは「数のメリット」でしょうか。弥生のユーザーは全体で150万事業者。その大きな市場に対し、単に会計ソフトメーカーとしてだけでなく、カスタマーサポートの充実、さまざまな付加価値サービスなど、事業コンシェルジュとしてさまざまなサービスを提供されている——そのことが、Misocaユーザーにとって大きなメリットがあると感じています。
岡本 おそらく、Misocaのようなスタートアップ系のクラウドサービスというのは、いわゆるアーリーアダプターと呼ばれる感度の高い人たちがいち早く導入しているサービスですよね。この便利なサービスを、弥生のユーザーにもお届けすることで、弥生ユーザーの利便性向上にもつながりますし、Misocaのユーザー層の拡大にもつながるという点で、この協業が両社を良い方向に持っていけると考えています。
豊吉 協業後の現在は、基盤統合を進めており、今年5月にはユーザーサポートも正式に提供できるようになりました。お客様により安定した基盤のサービスを提供できる準備ができましたから、Misocaの開発チームとしてもサービスの開発、製品の改善により注力していきたいです。
——岡本社長は、このたびの協業の背景には「想い、実績、ビジョンの一致があった」と、たびたびお話されていますよね。
岡本 はい。「繁忙期にある事業者の困りごとのお手伝いをしたい」という、両社の社名にも表れた “想いの一致”(※編者注:弥生は確定申告&決算が重なる「3月」、Misocaは「月の末」を意味する「晦日(みそか)」が社名の由来)。そして、会計ソフトとクラウド請求書サービス、それぞれの市場で売上ナンバー1を誇る“実績の一致”です。
——「ビジョンの一致」とは?
岡本 これがとても重要です。弊社では単に会計支援あるいは請求書作成・発行という部分に留まるのではなく、見積作成・発注、受注から納品、検収、請求、支払・入金……という一連の流れをクラウド上で電子的に処理する——中小企業向けのコネクトEDI(Electronic Data Interchange)構想というものを見定めています。その部分でもMisocaと「実現したい世界」が一致したからこそ、ともにその未来に向けて歩んでいけると思います。
(参考リンク)
・岡本社長ブログ「弥生社長の愚直な実践」
2016年02月22日「想いの一致と実績の一致」
2016年02月29日「ビジョンの一致」
コネクトEDI実現への想い
——豊吉社長が、中小企業向けのコネクトEDIという同じビジョンを見定めていたのはなぜなのでしょう?
豊吉 フリーランスのプログラマーとして活動していたときの、商取引の体験ですね。Misocaもそうした自分自身の実体験から生まれたサービスですが、ほかにも、見積書を送るにしてもFAXで送らなければいけないし、契約書にはハンコを押さなければいけない。ほかに入金期日の管理もあれば、通帳記入、未入金の督促なんかもある……。事業者がわからないものをわからないなりにこなしているうちに、それが独自のやり方として定着してしまう——そんな実態がどこにでもあると思います。実際にMisocaを運営していくなかでも「入金のチェックをもっと便利にしたい」とか「取引先の与信判断的な作業をどうにかしたい」といった声を聞きます。個人事業主や中小企業経営者の多くが、そうした余計なことに時間をとられていると思うんです。
——たしかに個人事業者や中小企業経営者の多くの困りごとでしょう。
豊吉 でも、世の中にある個人間の商取引——例えばネットオークションのようなもの——を見ると、すでに安心して取引のできる同一のプラットフォームが整備されているじゃないですか。そういうものがBtoBの世界にもあればいいのに、と常々思っていました。コネクトEDIが実現すれば、各人が余計な仕事に力を注ぐ必要もなくなり、もっとクリエイティビティを発揮できるようになると思うんです。
岡本 実は、豊吉さんと私には、個人的な共通点があるんです。1つは、お互いにエンジニアであること——私の場合は元・エンジニアで、もうすっかりコードを書くことはありませんが——エンジニアはモノゴトをロジカルに考える癖が身についています。そしてもう1つが、2人とも事業を立ち上げた経験があることです。私も過去、コンサルティングの会社を起業したことがありますから、今の豊吉さんのお話はとてもよくわかる。ロジカルに考える、自分ゴトとして考える——これらが掛け合わされると、おのずとEDI構想のような結論になっていくのだと思います。
——将来的には、コネクトEDIによって、どんなことができるようになるのでしょうか?
岡本 これまで当社は、事業者の“今の状況”を測る会計ソフトづくりに注力してきました。しかし、その結果から何か将来的な“次に打つ手”を提供することはできていません。コネクトEDIが実現していくと、当然、膨大なデータが生まれていきます。それをビッグデータととらえれば、AIなども力を発揮できる可能性が生まれます。
——事業者に未来を提示できるようになるかも、ということですね。一方でMisocaの展望は?
豊吉 私たちがユーザー1人ひとりにご提案していくべきことは変わりません。しかし「取引先が発注をFAXでしか受け付けてくれないけど、スマホから発注できればもっと便利になるのに」といったことも、コネクトEDIの発想につながっていくと思うんですよ。「シンプルでかんたん」というMisocaの特徴を大切にしながら、よりよいサービスにしていくべく、お客様1人ひとりの声を真摯に聞いていけば、きっとその先にコネクトEDIがある——そう考え、ユーザーの声をこれからも大切にしていきたいです。
——ありがとうございました。